魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 転移した先は集落の入口前だった。

 帰ってきてみせると意気込んだはずの場所にあっさり立っていたことがおかしくて、イーダはクスっと笑ってしまった。

「えっ、何がおかしいの?」

「何でもないです。時間が惜しいんで、さっそく魔王様に私の家族を紹介させてください」

「君の家族は、王宮ではなくてここにいるの?」

 イーダは自分の素上についてまだ語っていなかった。

(魔王様は私が魔女だってことは知ってるのに、王宮に住んでると思ってたのかな? まあ、王宮から魔界に召喚されたんだから、そう勘違いもするよね)

「祖母と母と姉妹がたくさんいますよ。全員魔女です!」

「それはすごいね!」

 魔王様が驚いたのがおかしくて、イーダは『ふふっ』と笑った。

(みんなは今も薬を作り続けてるのかな?)

 イーダは集落の中へと入った。
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