魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
1. 王命

1.1

 この集落に住む魔女たちにとって、最も重要な場所である平屋の建物──

 共有の台所であり、調合室でもある。

 そこでは現在魔女たちが交替で火の番をして、横一列に並べた6つの大きな鍋をかき混ぜ続けていた。

「うあー、朝日がまぶしい。もう限界なんだけど。この苦行はあと何日続くの?」

 目の下にくっきりと隈をつくっている魔女がボヤいた。

 この魔女だけが住む集落は、マルスドッテル王国ノールブルク領にある。

「私が代わるから少し寝ておいでよ」

 イーダは食事中だったものの、自身にとって姉のような存在であるその魔女にそう言った。

「イーダだって、さっきまで薬の材料を調達しに森に行ってたじゃない。疲れてるんじゃない?」

「でも今寝たら胃がもたれそうだから、何かして起きてたほうがいいと思う」

 イーダはスープボウルを両手で持ち上げえると、それをがぶ飲みした。
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