魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

(出向く前に、国王陛下へ返事を送っておいたほうがいいかしら……)

「ラーシュ、今来られる? お願いしたいことがあるの」

 ソフィーは、自分が『ラーシュ』と名付けた使い魔を呼んだ。

 いくら呼んでも姿を見せないこともあるというのに、どうやら今日は運がいいらしい。

 暇で退屈していたのか、真っ黒なカラスがどこかから飛んでくるでもなく、窓の桟に止まっていた。

「ラーシュ、この手紙を国王陛下に急ぎで届けてほしいの。国王陛下、分かる?」

 ラーシュは首を傾げた。

(そっか、ラーシュは知らないのね)

 ソフィーは小さく息を吐いたあと、娘たちに聞こえないようにこっそり『サンディのこと、覚えてる?』と聞いた。

(『サンディ』と口にするのは何年振りだろう? 20年……は経ってないか……)
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