魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

「王女殿下と色が異なるのが目ではなく髪だったのは幸いだ。こうしている間にも疫病は広がっているからな」

 男はイーダの腕を引っ張り上げた。

(だから、痛い、痛いってば! 『立て』と言われれば自分で立てるのに!)

 ソフィーが叫ぶようにして聞いた。

「それで彼女に王女殿下の身代わりをさせて、どうするつもりなのですか?」

「魔王に嫁がせる!」

 魔女たちの顔から血の気が引いた。

 子どもは泣き出した。

「それが魔王の要求してきた対価だというのですか?」

「そうだ。身代わりだとバレることなく、斑紋死病の特効薬を魔王に作らせろ」

「魔王を欺こうなどと無謀です。第一王女殿下ご自身が嫁がれるべきです!」

「王女殿下は現在斑紋死病に侵され、臥せっておられる。魔王に嫁げるような状態ではない」

「だからといって、どうして魔女なのですか?」
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