さまよう綸

SS

 夏以降、私が過ごすのは1週間のうちマンション4日本家3日というバランスだったが入籍後そのバランスが反対になった。正宗の仕事の都合もあるし、私が本家で過ごすことにずいぶんと慣れたからだ。

 入籍後1週間ほど経った今日はお父さんに呼ばれた。

「綸、そろそろ買い物に行こうと思うがどちらの百貨店を使うか決めたか?」

 何回か聞かれていたが本当にどちらでもよくて結局正宗と相談して決めた方を伝える。以前正宗たちへのプレゼントを買ったブランドが1階にメンズとレディースのどちらも扱う店舗として入っている百貨店だ。エリア的には片桐さんの担当エリアだろうと言っていた。

「わかった、外商に連絡を入れて平日の夜に行くことになる。一緒に行くぞ」

 そしてさらに1週間後、10月末の平日閉店後にその百貨店へ行くことになり私はお父さんと出かけ、正宗は仕事終了次第合流するという。お父さんを筆頭に高須幹部と数人の奥様ががらんとした駐車場から店内に入り、担当外商の挨拶を受けたあと思い思いに買い物を始めるようだ。

 マンションに正宗が私の物をたくさん準備してくれたのが春だったので、これからの季節の物を揃えないといけない。衣類だけでなくリネン類もいる。でもそんなに沢山の買い物を一度にしたこともないし出来そうにないと昨日正宗に言うと、そしたら毎週買い物に行くか?と言われて丁重にお断りした。ここへ来る車でお父さんにその話をすると

「これいるかも、と思えば全部担当者に渡せ。結納金も納めず嫁に来てもらったんだ。今日は全部俺持ちだ」

 と頭を撫でられた。所々この親子は似ている。
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