さまよう綸
第8話
私たちはいい大人だ、職務を放棄するわけにはいかない。あのあと私をベッドへと抱き上げた正宗を、仕事しないとと何とか説き伏せ、私はいま下で黙々とパソコンに向かっている。
「綸ちゃん、仕事中悪いがこれ」
「ありがとうございます、瀬口さん。ちょっと試して来ていいですか?」
そう言い渡された物を持って部屋に入りクローゼットにそれを置いた。
「わあ、ぴったりです。あっどうぞ入ってください」
瀬口さんは私の部屋に入らず入口で待っていたが出来栄えを見てもらおうと声を掛ける。
「ちょっと失礼する」
そう言った瀬口さんは左足を引きずった歩き方ながら素早くクローゼットまで来て私の足元と頭上を見た。
「おお、大丈夫だな」
「何してる?」
瀬口さんの声に続き正宗の声がして驚く。さっき出て行ったばかりでもう戻ったのか。
「おかえりなさい、正宗。これ見て。瀬口さんに作ってもらったの」
正宗に得意げに乗って見せるのは15センチほどの踏み台だ。私が大きくはないので服が掛かった上の段に置かれているものに手が届きにくかったのだ。すぐに買おうとする彼に要らない箱に乗ればいいと言う私。話を聞いていた瀬口さんが簡単に作ってやると言ったのでお願いしていた。
瀬口さんは正宗に頭を下げて部屋を出ていく。
「ありがとうございました」
少し大きめの声で言う私の頭に手を乗せた正宗は
「まだ小さいな」
と失礼な事を言う。
「そんなに小さくはない…156位だもの。ここの造りが大きいのよ。仕事の途中なの、下へ戻るね」
踏み台に乗ったままの私の腰に腕を巻き付けた正宗は
「キスが近い」
と言い唇を重ね、こめかみにもキスすると囁いた。
「今夜が楽しみだな。夕飯早くしておく」
朝、仕事を始める時に言われていたんだ‘今は我慢するが夜は覚悟しておけよ’って。
まだ仕事が残っているのにそんな声で囁いてはいけない。彼の腕をすり抜けて階段を駆け下りると、セツさんがちらし寿司とお吸い物が作ってあるからと言って帰る。すぐ食べられるようにしてあるのか…とにかくもう少し仕事しようとパソコンの前に座ると、潤と駿が仕事を手に入って来た。そして
「綸ちゃん、それ今日中に出来なくても大丈夫だよ」
とニヤニヤしながら言うからいたたまれない。無視することにして黙々と作業を進めた。
「綸ちゃん、仕事中悪いがこれ」
「ありがとうございます、瀬口さん。ちょっと試して来ていいですか?」
そう言い渡された物を持って部屋に入りクローゼットにそれを置いた。
「わあ、ぴったりです。あっどうぞ入ってください」
瀬口さんは私の部屋に入らず入口で待っていたが出来栄えを見てもらおうと声を掛ける。
「ちょっと失礼する」
そう言った瀬口さんは左足を引きずった歩き方ながら素早くクローゼットまで来て私の足元と頭上を見た。
「おお、大丈夫だな」
「何してる?」
瀬口さんの声に続き正宗の声がして驚く。さっき出て行ったばかりでもう戻ったのか。
「おかえりなさい、正宗。これ見て。瀬口さんに作ってもらったの」
正宗に得意げに乗って見せるのは15センチほどの踏み台だ。私が大きくはないので服が掛かった上の段に置かれているものに手が届きにくかったのだ。すぐに買おうとする彼に要らない箱に乗ればいいと言う私。話を聞いていた瀬口さんが簡単に作ってやると言ったのでお願いしていた。
瀬口さんは正宗に頭を下げて部屋を出ていく。
「ありがとうございました」
少し大きめの声で言う私の頭に手を乗せた正宗は
「まだ小さいな」
と失礼な事を言う。
「そんなに小さくはない…156位だもの。ここの造りが大きいのよ。仕事の途中なの、下へ戻るね」
踏み台に乗ったままの私の腰に腕を巻き付けた正宗は
「キスが近い」
と言い唇を重ね、こめかみにもキスすると囁いた。
「今夜が楽しみだな。夕飯早くしておく」
朝、仕事を始める時に言われていたんだ‘今は我慢するが夜は覚悟しておけよ’って。
まだ仕事が残っているのにそんな声で囁いてはいけない。彼の腕をすり抜けて階段を駆け下りると、セツさんがちらし寿司とお吸い物が作ってあるからと言って帰る。すぐ食べられるようにしてあるのか…とにかくもう少し仕事しようとパソコンの前に座ると、潤と駿が仕事を手に入って来た。そして
「綸ちゃん、それ今日中に出来なくても大丈夫だよ」
とニヤニヤしながら言うからいたたまれない。無視することにして黙々と作業を進めた。