さまよう綸
一転、車中の人となった私に、助手席にいるさっきの彼が
「畠山潤です。よろしくお願いします、綸さん」
運転席からも同じような顔で
「畠山駿です。よろしく」
挨拶してくるがよろしくすることもないし、勝手に調べて名前だけでなく好きな歌手まで知っているとか気味が悪い。だが今の私には重要な目的がある。
「早く聞かせて」
と……いきなりマサムネのギターが響きイントロから…体が音に包まれる。
♪~~♪
心地よいベース音だ…マサムネのラララはずっと聞いていられる…ああ、彼に包まれているよ…私。
「ねっ、いい音だろ?」
良かった…今日はいい日だ…
「ありがとう、じゃあ」
車を降りようとした私を隣から伸びて来た手が掴んだ。
「車、動いてるぞ」
え…知らなかった…隣のワイルドセクシーな彼に聞く。
「…どこ行くの?」
「メシ」
「…行けばいいけど、私は帰る。降ろして」
「何食いたい?」
「日本語通じないの?降ろして」
「好きなもの食わせてやる。肉か?寿司がいいか?」
「…マサムネ…ああ、あなたじゃなく、歌手マサムネにつられて来たけど食べ物にはつられないわ。降ろして」
「あなたじゃない、正宗だ」
あー誰か何とかして下さい…話が通じない。クスクス…前の二人が笑いながらこそこそ話している。
「早口じゃないのにやけにテンポのいい会話だな」
「ああ、しかも無駄にセクシーな正宗の声に負けないくらい綸ちゃんの声もセクシーだな…ほんの少しハスキーボイス」
「そりゃ、啼かせたくなるな…男は」
双子とおぼしき男たちは何を話してるんだか…
「くだらない…」
夕方帰宅ラッシュの交差点で車がスピードを落とした…その時、ドアを開けて半分転げ落ちながら走り出した。
「綸っ…」
呼ばれても足が痛くてもとにかく人の多い方へ走り、何駅かもわからない地下への入口へ駆け込み、改札でカードを翳すと後ろを振り向いた…しんど…もう大丈夫そうだ。
「畠山潤です。よろしくお願いします、綸さん」
運転席からも同じような顔で
「畠山駿です。よろしく」
挨拶してくるがよろしくすることもないし、勝手に調べて名前だけでなく好きな歌手まで知っているとか気味が悪い。だが今の私には重要な目的がある。
「早く聞かせて」
と……いきなりマサムネのギターが響きイントロから…体が音に包まれる。
♪~~♪
心地よいベース音だ…マサムネのラララはずっと聞いていられる…ああ、彼に包まれているよ…私。
「ねっ、いい音だろ?」
良かった…今日はいい日だ…
「ありがとう、じゃあ」
車を降りようとした私を隣から伸びて来た手が掴んだ。
「車、動いてるぞ」
え…知らなかった…隣のワイルドセクシーな彼に聞く。
「…どこ行くの?」
「メシ」
「…行けばいいけど、私は帰る。降ろして」
「何食いたい?」
「日本語通じないの?降ろして」
「好きなもの食わせてやる。肉か?寿司がいいか?」
「…マサムネ…ああ、あなたじゃなく、歌手マサムネにつられて来たけど食べ物にはつられないわ。降ろして」
「あなたじゃない、正宗だ」
あー誰か何とかして下さい…話が通じない。クスクス…前の二人が笑いながらこそこそ話している。
「早口じゃないのにやけにテンポのいい会話だな」
「ああ、しかも無駄にセクシーな正宗の声に負けないくらい綸ちゃんの声もセクシーだな…ほんの少しハスキーボイス」
「そりゃ、啼かせたくなるな…男は」
双子とおぼしき男たちは何を話してるんだか…
「くだらない…」
夕方帰宅ラッシュの交差点で車がスピードを落とした…その時、ドアを開けて半分転げ落ちながら走り出した。
「綸っ…」
呼ばれても足が痛くてもとにかく人の多い方へ走り、何駅かもわからない地下への入口へ駆け込み、改札でカードを翳すと後ろを振り向いた…しんど…もう大丈夫そうだ。