さまよう綸
 会社の仕事を最低限こなしながら組の仕事の最大限する。

 綸と会いたいと思うが、ここ本家には傘下の組がしばらく出入りするしマンションでも一人にさせてしまう。電話して声を聞いても会いたくなるだけだ。それなら一日でも半日でも早く片付けてしまおう。

 連日2、3時間の睡眠でミスの許されない仕事をする。

 俺だけでなく潤と駿にとっても過酷な2週間だがなんとか収まりそうだ。暑気払いの準備は今年は俺がするはずだったが親父が引き受けてくれた。高須の暑気払いは直属の傘下の組幹部がホテルで集まる交流の場だ。

 先が見えたことで、ふと綸のことを考えあることを思い立ちすぐに潤たちに連絡し出かける。

 多忙極める今、俺が出かけるのは潤たちに負担が掛かって申し訳ないが今しかない。行き先を告げると潤と駿は組の顔を捨て快く車を出してくれた。

 その後、詳細までけりをつけ7月8日の暑気払い前日7日には本家広間で今回の宮本の件を組長組員たちに報告し、無理を頼んだ礼を述べ慰労会として酒を存分に出す。

 無理だと思っていたがやりがいがあった、あの時の采配は誰も思いつかない見事なものだ…組員たちが口にすることで今回の仕事を肯定的に捉えてくれている事がわかり有り難く思うと同時に、ここにいる者たちも守らなければと改めて気を引き締める。

 さあ、綸。明日から離さない、覚悟しておけよ。
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