さまよう綸
 過保護2日目の夜、もうすぐ正宗たちが帰って来るのでマサムネの曲を聞きながら食事を仕上げる。

♪~〜♪

「「〜~♪ただいま~いとちゃ~ん」」

 いいところを二人に歌われるが近頃慣れた。

「正宗、おかえりなさい」
「ん、体調は?」
「何ともなかった。ありがとう」

 食後、潤と駿にプレゼントを渡すことにする。

「潤、駿。いつもありがとう。気に入ってくれるといいんだけど…」
「「ありがとう」」
「開けていい?」

 二人が開けている間に正宗の耳元に寄りそっと伝える。

「正宗には後で渡すね」
「お前っ…チッ、抱けない時に可愛いことすんなよ」

 そう言って足の間に座らされ彼は私の肩口に顔を埋める…定位置だ。

「わぉ、格好いい!気に入った」
「太さがちょうど良い…ん?イニシャル?」

 彼らの物にはプレートはないがチェーンの間に小さな球がひとつあり、そこに‘J’と‘S’がそれぞれ刻んである。すぐに着けてくれた二人にそれはよく似合っていて嬉しくなる。

「綸ちゃん、ありがとう。嬉しい」
「ありがとうな。大事にする」

 プレゼントを渡すと予告して渡すのは恥ずかしいものだな…これも初めて知ったと苦笑を漏らしながら彼の部屋へ入る。

「えっと…正宗、いつもありがとうございます?」
「ぶはっ、来い…くっくっ…」

 ベッドに腰掛けた彼は喉を鳴らして笑いドアの前に立つ私に手を伸ばす。彼の前に立つと

「これ正宗に…見てくれる?」

 箱を両手に乗せて差し出す。彼は受け取る前に私を、ここも定位置の右膝に乗せ長い腕で私をぐるりと囲って箱に触れると

「潤と駿、伊東たちにもありがとな。綸が俺の周りも自分の周りも大事にしてくれて嬉しい」
「正宗の大事な人たちよね。高須の全員にプレゼントすることは無理だけど、みんなにはまたお肉焼いて貢献するわ」
「そうしてくれ」

 それから彼はそっと包みを取り箱を開ける。

「揃いか?」
「一応…でも正宗のだけプレートが付いてるデザインなの」

 彼は箱の中でプレートを裏返して

「…綸、最高だな。つけてくれるか?」

 そう言って腕を出す彼は頭を私の頭にグリグリする。私はブレスレットを取り出しながら

「ふふっ、痛いよぉ…もぉ」

 今度は頭に唇が落ちてくるのを感じながら彼の腕にブレスレットを着け、それを撫でながら言う。

「刻印をお願いする時にね、正宗と私のイニシャルはもちろんそのままだけどメッセージっていうの?それ‘お間違いでないですか?’って確認されたの。‘i’であってるんだけど‘o’だと思われたみたい。普通はそうなんだろうね」
「でも綸から俺へのメッセージはこれだな。しっかり受け取った」

 ‘love’ではなく‘live’生きる。
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