さまよう綸

第14話

 1週間後、小笹さんの運転で4人へのプレゼントを取りに行った。彼の傷は本家で今泉先生が消毒してくれていて今日この後抜糸予定だという。

「伊東さん、小笹さんありがとうございました。小笹さん、抜糸後お大事に。明日はマンションから出ませんのでまた連絡しますね」

 マンションの自室にプレゼントを置き部屋着に着替え、今ドラッグストアで買った鎮痛剤を飲んでリビングのソファーでクッションを抱え踞る。久しぶりだな…こんなに痛いの…早く薬効いて。

 朝から不調を感じたが毎月それほどしんどくないので予定通りプレゼントを取りに行った。しかしお腹と腰の痛みがひどくなってきたのでドラッグストアに寄ってもらい帰って来たのだ。薬飲むのが遅かったな…汗…動けない…我慢。

「綸…綸」
「へっ?正宗、どうしたの?」
「どうしたじゃねぇだろ、この汗…どうした?」
「大丈夫、女の子特有のモノ…病気じゃない…もう薬が効くはず」
「いつもこんなだったか?」

 彼はすぐに冷たいタオルを持ってきて顔と首筋を拭いてくれる。

「ぁりがと…仕事は?」
「30分くらいでまた出る。伊東から電話があってお前の具合が悪そうだ、鎮痛剤買ってたと聞いてすぐ電話しても出ないから焦った」
「ごめんなさい…スマホバッグの中だ」
「セツさんに来てもらうか?」
「ううん、ほんと大丈夫だから」

 彼は私のバッグからスマホを、キッチンから水とお茶を持ってきて前のテーブルに置き

「スマホは部屋の中でも持ち歩け。また連絡する」

 そう言うと、チュッチュッとリップ音をさせて額、瞼、鼻、頬へ唇を落とし最後に唇を食べて‘ごちそうさま’と出掛けた。うふっ…お薬効いてきたかも…キスが効いた?痛みが和らぎ少し体の力が抜けると、しばらくうとうとする。落ち着いたな…よし、仕事しよう。重さはあるがあの冷や汗の出る痛さはないのでパソコンを取りに行きテーブルに置くとprurru…今泉先生だ。

「はい、先生。綸です」
‘おお、どうや具合は?薬効いたか?’
「ありがとうございます。効きました」
‘そうか、ほな腹と足を冷やさんようにしてな’
「…はい、病気じゃないのに…正宗ですよね…」
‘まあ男にはわからんからな。汗だくで苦しんでるっ!と連絡あってびっくりしたわ。また本家も来てな’

 切ると同時にprurru…正宗だ。

「正宗?」
‘どうだ?’
「もう大丈夫、ありがとう」
‘何してる?’
「えっ?今泉先生から電話があって話してた」
‘…今日は仕事するなよ’
「みんな生理中でも仕事してるよ」
‘人は人、綸は綸。絶対ダメだ。また電話する’

 しんどいところを見せてしまったせいで、翌日との二日間過保護な扱いを受けることになった。
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