強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
その一言が、胸の奥に突き刺さった。
「……わかりました」
わたくしは笑った。
いつも通り笑えているかはわからない。
「では、もう何も言いません」
「瞳」
「お好きなようになさってください」
背を向けてゆっくり歩き出す。
呼び止めてくれないかと、頭の片隅で願ってしまう。
でも、藤太は何も言わなかった。
わたくしはそのまま屋敷へ戻る。
扉が閉まったその瞬間。
涙が一滴、落ちた。
「……馬鹿」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。
それでも目をこすって両頬を両手で勢い良くはさむ。
小気味のいい音が鳴って、気持ちを切り替えられたような気がした。
「……よし」
何も言わない、と藤太に言った。
何もしない、とは言わなかった。
「……なら、わたくしも好きにさせていただきますわ」
背筋を伸ばして、自分の部屋へと向かった。