強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「お嬢様」


 翌朝。

 田中が、私の部屋を訪ねてきた。


「少し、お伝えしたいことがございます」

「何ですの?」

「藤太さんのことなのですが……」


 嫌な予感がした。


「藤太が?」

「昨夜、退職の申し出があったそうです」

「……え?」


 言葉が出なかった。


「久保寺家でのお仕事を辞めて、施設に戻るつもりだと」


 胸の奥が、冷たくなる。


「……いつ?」

「今日の夕方には」

「そんな……」


 私は立ち上がった。


「藤太はどこに?」

「庭にいるかと」


 私は走った。

 廊下を抜けて、玄関を飛び出す。

 庭の向こうぬ藤太がいた。

 執事服ではなく、制服姿で小さな鞄を手にしている。


「……藤太!」


 彼が振り返る。


「瞳……」

「本当に……辞めてしまわれるの?」

「……うん」

「どうして」

「みそら園を守るため」


< 138 / 182 >

この作品をシェア

pagetop