強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 だから──離れたくない。

 でも、今はまだその言葉を口にする勇気がなかった。


「……あなたがいなくなるのは、嫌です」


 代わりに、それだけを伝えた。

 藤太は泣きそうな顔でわたくしを見つめた。

 けれど、手にした鞄を離そうとはしなかった。

 みそら園を守るため。

 わたくしを守るため。

 そして、自分自身を傷つけないために。

 藤太はわたくしから離れようとしていた。

 ――このままでは。

 本当に、彼を失ってしまう。

 そんな予感がした。


「お嬢様!」


 玄関から田中が走ってきた。


「お嬢様、今すぐお戻りください!」

「何事です? 取り込み中なのがわかりませんの?」


 このまま屋敷に戻ったら、絶対に藤太は出ていってしまう。

 苛立ちのまま問えば、田中は眉尻を下げながら報告してきた。


「奥様からお電話です」

「え」

「『藤太くんも連れてきなさい』と……」


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