強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
今はただの高校生で、みそら園で暮らしながら、放課後に久保寺家で働いている。
しかも、そのみそら園すらなくなろうとしている。
「……わかりません」
藤太は絞りだすように答えた。
「わからない?」
「はい」
藤太の声はかすかに震えていた。
「俺には、何もないから」
「何も?」
「金もないし、家柄もないし、みそら園だって守れるかわからない」
「……」
「それなのに……瞳だけは幸せにするなんて、そんなこと言えません」
尚人さんは黙って聞いていた。
「俺が瞳の隣にいたら、きっとあいつは苦労する」
「……」
「久保寺家の人間として生きていくなら、もっとふさわしい人がいる」
「僕のこと?」
衣ずれの音がする。
尚人さんが小さな笑い声を立てた。
「そういう意味だろ?」
「……」
「確かに、僕なら瞳さんの家に迷惑をかけることは少ないと思う」