強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「……はい」
正直な返事だった。
「理由は?」
「俺がそばにいると、瞳が傷つくからです」
「そうかな」
「そうです」
「僕は逆だと思うけど」
藤太が顔を上げる。
「瞳さんは、君が離れようとしたことで傷ついている」
「……」
「僕でさえ、そのくらいはわかる」
「……それは」
「当事者である君なら、それくらいわかったんじゃないかな?」
尚人さんがゆっくり息を吐く気配がした。
「僕は君を責めたいわけじゃない」
「……はい」
「ただ、ひとつ聞きたい」
初めて聞く、尚人さんの逃げることを許さない声音。
「君は、瞳さんを幸せにできるのか?」
「……」
藤太は答えない。
それでも今の彼の気持ちが、痛いくらいわかる。
(……釣り合い)
久保寺家のような大きな家も、鈴間家のような企業も、十分な金も、将来を約束できる仕事もない。