強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



「……僕なら、瞳さんのためだと思って、彼女にとって一番いい道を示そうとする」


 わたくしは胸を押さえた。

 何となくだけれど、尚人さんが言おうとしていることがわかる気がした。

 藤太は、尚人さんのように手を引こうとしない。

 わたくし自身が選ぶことを、待とうとしている。

 どちらが正しいのか、わたくしにはわからない。

 ただ、ひとつだけ確かなことがある。

 藤太には、富も、家柄も、社会的な立場もない。

 それでも、私の気持ちを自分のものにしようとはしない。

 だからこそ、わたくしは彼の側で安心していられるのかもしれない。


「……参ったな」

「え?」

「僕、君に勝てると思っていたんだけど」

「何の話ですか」

「瞳さんのこと」

「……」

「君と話してわかった」


 尚人さんが苦笑する声がした。


「僕はもう、負けてるのかもしれない」

「そんな……」


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