強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
14.お嬢様、執事と手を取り合う
お父様に呼び出された。
田中に朝一番で伝えられて、心臓が口から飛び出しそうになる。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
「……お父様が?」
「尚人様との婚約について聞きたいことがあると……」
「……わかりました」
朝の支度をすませ、病院へ向かう足がいつもより遅くなる。
扉を開けると、ベッドの上で、お父様がゆっくりと身体を傾けていた。
「お父様」
「瞳、待っていたよ」
声に怒気はない。
肩から少し力が抜けた。
「はい」
わたくしはベッドの側に寄った。
「尚人くんとの婚約を、断ったそうだな」
「……はい」
首を縦に振る。
「……ご叱責は覚悟しております」
声が震えそうになるのを、必死で堪えた。
お父様からすれば、わたくしと鈴間家の御曹司が婚約すれば久保寺家の権勢はますます盛んになる。
そのチャンスを、わたくしの感情一つで失ったのだ。