強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
胸がいっぱいになって、それが目から溢れないように何度か瞬きをする。
お父様が倒れてから、わたくしはずっと一人で抱えて頑張ってきたつもりだった。
でも本当は、誰かに「一人で頑張らなくていい」と言ってほしかった。
もっと言うなら、互いに協力し合えるような人たちがほしかったのかもしれない。
「……そろそろ帰ったほうがいいですわ。施設の方々が心配なさいます」
「そうだな……その、すごく図々しいんだけど──」
「傘ならお貸しします」
言い淀む彼に代わり、わたくしが提案してそっと部屋のドアを開けた。
廊下は変わらず暗かったけれど、今は妙な高揚感だけがわたくしの中でくすぶり始めている。
「返しに行くよ」
彼が屋敷の裏口で耳打ちした。わたくしも帰り道を伝える。
「ここから裏門まで道なりに進めば、工事中の塀から外に出られます」
「本当にありがとう」
藤太は深く頭を下げると、小雨の中を駆けていった。