強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ
「お帰りなさいませ、お嬢様」
屋敷に戻ると、いつものように藤太が出迎えてくれた。
「……ただいま」
目が合う。
それだけで、少し安心した──のだけれど。
「本日のご予定を確認いたします」
「……え?」
「夕食後は書類の確認。その後、旦那様の病院へお電話を──」
「藤太」
「はい、お嬢様」
その呼び方が、いつもより遠く感じた。
いつもなら、二人きりのときは「瞳」と呼んで「今日はどうだった?」と聞いてくれるのに。
「どうしたの?」
「何がでしょうか」
「……いえ」
気のせいだと、そう思いたかった。
でも、それから数日間……藤太の態度を見ていたら、明らかに変わってしまった。
以前なら、二人きりになると、「瞳、今日ちゃんと食べた?」なんて言ってきた。
わたくしが無理をしていれば、「もうやめとけ」と勝手に資料を取り上げたりもした。