強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 噂なんてどうでもいい。

 身分なんて。

 周囲の目なんて。


「わたくしは……」


 声が震えた。


「あなたが勝手に距離を取るほうが、嫌なんです」


 藤太が唇をかんだ。


「……」

「わたくしが何を思っているかも聞かずに」

「……」

「わたくしのためだなんて決めつけて」

「瞳」

「嫌です」


 わたくしは目を逸らした。


「そんなふうに、わたくしの前から離れていくのは……嫌」


 長すぎる沈黙が落ちる。

 わたくしは耐えられなくなって、部屋を出ようとした。

 その腕を藤太がつかんだ。


「待って」

「……離してください」

「嫌だ」

「……!」


 いつもなら、こんなふうにわたくしを止めることなんてない。


「俺だって」


 藤太の声が震えていた。


「離れたいわけじゃない」

「……」

「お前のそばにいたい」


 心臓が、大きく鳴った。


「でも、ダメなんだ」


< 95 / 182 >

この作品をシェア

pagetop