強気で完璧なお嬢様は執事の前でだけヘタレ



 藤太が苦しそうに笑う。


「お前は、俺とは違う」

「……」

「お前は久保寺家のお嬢様」


 その言葉が、今まで以上に重く響いた。


「俺は、施設育ちのただの高校生だ」

「違いませんわ」

「違う」

「違いませんわ!」

「違うんだよ」


 藤太の目が、真っ直ぐわたくしを射る。


「だから、俺がどれだけお前のそばにいたいと思っても」


 その先を、藤太は言わなかった。

 言えないのだと思った。

 わたくしも、何も言えなかった。

 だってわたくしたちの間には、確かに格差がある。

 家柄。

 立場。

 暮らしてきた環境。

 そして──“お嬢様”と“執事”という関係。

 わたくしたちがどれだけ近づいても、その境界線だけは消えない。


「……だったら」


 わたくしは小さく呟いた。


「どうして、わたくしの側に来たんですの?」

「え?」

「どうしてわたくしを助けたり、心配したりするの?」


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