恋愛偏差値が低すぎる!!
よし、帰ろう。逃げよう。怖すぎる。

自分のことを庶民だと認めたくないが、ここまで住む家どころか、住む世界すら違いそうな人に会って、懐に入り込むなんて不可能だ。もし不手際があったら?消し炭にされるかもしれない。

芦田先生に託された茶封筒を脇に抱え、キョロキョロとポストを探す。しかしそれらしき物は見当たらない。なんなら一面壁でぐるりと囲まれていて、ドアらしき物すらどこにも見当たらない。

昔ながらの家なら、ドアに郵便受けがついてて、そこに入れられるんだけど…

さすがに託されたものを無理でしたと突き返すほど臆病者ではない。それにあの芦田先生だ。私が弱みを見せた瞬間、多分あの人は勝ち誇った様子になり、今までしてきた八つ当たりの仕返しをしてくるかもしれない。
だからさっさと目的を達成して家に帰ろう。そう考えながら早足で、立川葵の家の周りをグルグルと回る。傍から見れば完全な不審者だ。

「加藤さん…?」

「うわぁ!びっくりした」

そんな妄想をしながら歩いてると、後ろから肩を叩かれ、大きな声が出た。恐る恐る振り返ると、同じ制服を着た男の子が不思議そうな顔をし、こちらの様子を伺っていた。
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