君の名に花束を
二月十四日。世間ではバレンタインデーと呼ばれ、日本では女性が好きな男性にチョコレートを渡す日となっている。

緊張と恋が実ったことの喜び、逆に恋が萎れてしまった悲しみ、バレンタインデーは様々な感情で色付いている。ここにも緊張を抱いている女性が一人いた。

女性は電源のついたパソコンの画面の前で、目をきつく閉じて手を震わせている。誰かに告白をするわけではない。彼女が緊張しているのは別のことに関してだ。

とある出版社が応募した「新人小説コンテスト」に女性は小説を投稿した。今日がその結果発表の日なのだ。

バレンタインは好きな人に想いを伝える日だ。しかし、小説コンテストも似たようなものだと女性は人から聞いたことがある。女性の人生を大きく変えた人の言葉だ。

「う〜!」

結果を見ることが怖い。しかし、見なければ女性の心はいつまで経っても緊張によって張り詰めた状態のままだ。緊張と不安から声にならない声を上げながら、女性はマウスを動かし、「結果を見る」と書かれたところをクリックする。
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