この結婚には愛しかない
8.厳しく甘く愛おしい

人生が大きく変わった週末が終わった。


今朝は30分早く家を出た。朝一番に大森室長に入籍を報告するためだ。

左手の薬指がまだ慣れなくて、無意識に何度も触ってしまう。

伊織さんは出張で今日も明日も会えないけれど、伊織さんを感じられるから嬉しくて、こそばゆい。


居室に入ると、予想通り大森室長だけが出社されていたので、席に出向いて声をかけた。

とてもお世話になった。ではとても片付けられないほど何度も助けていただいた大森室長を目の前にすると、感極まってしまう。

「昨日神田専務と入籍しました」とご報告すると、すごく驚いて、その後とても喜んでくださった。


銀行員時代のあの一件があってから、唯一大森“次長”だけが味方でいてくれた。

一緒に転職しようと手を差し伸べてくださったから、伊織さんに出会えた。

仕事の楽しさを知ることが出来た。親友と頼もしい同僚とも。

もしあの時、大森次長がいなかったら、今頃自分がどうなっていたか分からない。


そう感謝の気持ちを伝えると、「これからも一緒にがんばろう」と言っていただけて、涙を堪えた。
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