この結婚には愛しかない
「伊織さんっ伊織さんっ」
咽び泣き抱きつく私を受け止め、強く抱きしめ返してくれる伊織さんが、「ごめん」を繰り返す。
一体どのくらい経ったのか。やっと気持ちが落ち着いた時窓の外は真っ暗で、私を支えてくれた3人はいつの間にかいなくなっていた。
「落ち着いた?」
顔を覗き込んでそう聞かれ、とっさに顔を隠す。
「今顔見ないでください。大泣きしてぐちゃぐちゃだから」
「どこが?こんなにかわいいのに。隠さないでよく見せて?」
「伊織さん...」
いつもの優しい穏やかな笑顔を見せてくれて、安心して力が抜ける。
支店長に対して、個人の想いを伝えられていた時の伊織さんは、今まで聞いたことがないほど、怒りに満ちた声だった。
「今回のことは完全に俺の落ち度だ。本当にごめん。謝っても許してもらえないかもしれない」
「どうして伊織さんが謝るんですか?謝らないでください」
「いや、莉央があいつと社内で会うリスクがあったのに見逃していた。辛い思いをさせてごめん」
伊織さんの方が辛そうな顔をされたから、やっと収まった涙がまた瞳を揺らす。