この結婚には愛しかない

「この会社の選択肢は3つ。1つ目は、ホールディングスから株式を買い取って独立する。ただ、生半可な気持ちでは軌道にすら乗れないかもしれません。2つ目はホールディングスのように買収される。すぐ買い手はつくでしょう。しかし全く別会社になりますし、旧社員は首切り対象です。3つ目は何もせず現状維持。10年以内に資金が尽きて倒産します。皆さんはどの道を選びますか?」

先ほど笑っていた役員の顔が一転、真剣な面持ちだ。誰1人口を開かず、神田さんの次の言葉を待っている。


「私はこの会社をホールディングスから独立させ、7,000人の社員とその家族の生活を守るために専務取締役に就任しました。この会社がこれから1番にすることは、10年の中期計画を作ることです。最初の3年で変革、苦しい3年になることは間違いないですが歯を食いしばって基礎を固めます。次の4年で成長、ここが勝負どころです。ですがその勝負には必ず勝ちます。最後ラスト3年で揺るぎない企業に。以上です」


神田さんが話し終わり、遅れて私のタイピング音がやみ、訪れた静寂。

すぐ、神田さんの選んだ選択肢と訴えに対して、自然と拍手が起きた。


私はその拍手に隠れて鼻をすすりながら、こっそりと涙を拭った。
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