この結婚には愛しかない
現在のような1社依存ビジネスほどハイリスクで脆弱なものはないと、莉央もよくわかっていると思う。

“第2の”と言っているけれど、2社3社で、現状のホールディングス分と最低でも同等、できれば1.5倍以上の売上を継続したい。

そんな取引先をこの先徐々に増やしていって、守りを固めたい。国内市場はキャパがしれているのでターゲットは海外市場。

それと並行して、設備投資と技術力を駆使して新たな“攻め”も推進していかなければ、半導体事業を続けることが難しい。

だからあそこまで厳しい発言をしたけれど、事業部長は理解し賛同してくれた。


自社の厳しい現状を全社員に知られるわけにはいかない。不安を煽るだけだ。

ただ、独立は厳しい。簡単なことではないんだということだけは共通認識として持っておいて欲しい。業績を伸ばし続けるためにも、全社員に同じ方向を向いていて欲しい。

そのためにも意識変革をやり遂げたい。


「もう寝るよ」

「はい。わ、もう2時ですよ」

シングルベッドに2人身を寄せて、いつものように抱きしめようとしたらそれを阻まれた。

「今日は私が腕枕したいです」


そう言って、俺の首の下に細い腕を差し入れて、頭を抱いてくれる。

ふわふわ、頭を撫でて、閉じた瞼の上にキスをくれた。


「本当にお疲れ様です。ぐっすり休んでください」

「気持ちいい...秒で寝そう」

「伊織さん、おやすみなさい」

「ん、」


温かくて、優しくて、心地よくて。


幸せに抱かれながら、深い眠りについた。
< 298 / 348 >

この作品をシェア

pagetop