はじめては誕生日のあと
「碧……?」

 つい呼び捨てにしてしまった。
 そうしたら碧は妙にうれしそうに笑った。

「やっと俺の名前、呼んでくれたな」
「そんなこと、どうだって……」
「重要だ。おまえに名前を呼んでほしい。もっと」
「何、言ってるの?」

 きっと、これも作戦だ。
 わかっているのに、どうして私はこんなに体が熱くなるんだろう。

「碧は酔ってるんだよ」
「ああ、そうかもな」
「ひゃあっ……!」

 碧が指先ですーっと私の首の後ろを撫でた。
 ぞくぞくぞくと体が震えて変な声が出てしまった。

「やめて……変になっちゃう」
「へえ、おまえ感じてんの?」
「っ……!」

 バカ! 碧のバカ!
 変なことばっかり言って私に意地悪ばかり。

「わ、私……お風呂に入るから!」
「一緒に入るか?」
「ぜったいイヤ!」

 碧の手を振り払うと、ようやく逃れることができた。
 危なかった。
 このままだと流されるところだった。

 でも、ほんとは、嫌じゃない……。
 こんなふうに思う私はもう碧に堕ちてしまったのかな?

 ううん、違うよね。
 これは好きとは違う。
 ただ、大人の行為が初めてだからびっくりしているだけだ。
 きっと。

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