はじめては誕生日のあと

5、ぜんぶ、あなたにあげる

 碧のマンションに着いたら派手な花柄の服を着た女性がロビーのソファに座っていた。
 高価そうなネックレスや指輪をしていて、相当なお金持ちなんだろうって思った。
 その女性がこちらを見て、ぱっと明るい顔になり小走りでやって来た。

「碧!」

 どきりとした。
 呼び捨て。一体この人はだれ?

 不安になっている私をよそに、女性は碧に抱きついた。

「碧、会いたかったー!」
「やめろよ。ここ日本だぞ」
「いいじゃないのー。ハグくらい」

 私は驚愕のあまり固まっている。
 いきなり碧に抱きついたのもそうだけど、この女性は碧と腕を組んでいた写真の人にそっくりだから。

「あ、あの……」

 私が声をかけようとしたら、女性はくるりと私に目を向けてにっこり笑った。

「可愛い! あなたが碧の結婚相手?」
「え? は、はい……」
「そうなんだ。あたし碧の従姉の亜美。よろしくね、えーっと?」
「柚葉です」
「柚葉ちゃん!」

 亜美さんは私ともハグをしてくれた。
 ふわっと大人の香水の匂いがして、不思議な気持ちになった。

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