あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
 いや、一度傾きかたカール子爵家よりは、厳格なエイムズ子爵家を選んだのだろう。
 だが、それだけの理由で、何も神殿から出る必要はなかったのだ。
 ウリヤナだって聖なる力を持っているのだし、そのまま神殿でおとなしく聖女としての任を全うしていれば、このような状況にならなかったのに。
「姉さんのせいじゃないですか! クロヴィス殿下から婚約を解消されたくらいで、勝手に神殿を飛び出して。姉さんのせいで、どれだけの人が苦労していると思っているのですか!」
 じわじわと食料不足が広がってきている。それでもまだ、カール子爵領はマシなほう。
「そうだ。姉さんがローレムバにいるのであれば、ローレムバに援助してもらえばいいじゃないですか。我が国の聖女様と引き換えに」
 そう、それがきっと正しいのだ。
 イングラム国の聖女ウリヤナをローレムバ国に与えたのだから、ローレムバ国はイングラム国に援助をする。
 何も間違った考えではない。
「そうと決まれば、早速連絡します」
 そう、アルフィーならこの案のすばらしさを理解してくれる。そしてクロヴィスにも認められ、イーモンはまた王都へと戻ることができる。
 ウリヤナ一人を犠牲にするだけで、この国は救われる。
 イーモンの碧眼は、何かに取り憑かれたのように爛々と輝いている。
 そんな彼を、両親が冷めた目で見つめていることなど、もちろん気づくはずもない。
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