あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
『あの女性は?』
『ウリヤナだ』
『なぜこちらに連れてこられたのですか?』
『例の爆発事故に巻き込まれて怪我をしたからだろう? けが人を放っておけと?』
 レナートの言いたいこともなんとなくわかるのだが、ロイが欲しい答えはそれではない。質問の仕方が悪かったのだろうか。
『彼女を、どうするおつもりですか?』
『どうする、とは?』
 やはり、純粋にけが人を見捨てられないからという思いで、彼女を連れてきたわけではないはずだ。何か、考えがあるものだと思いたい。
『私たちは明日、ここから発ちますよね? 彼女はどうするおつもりですか?』
『ソクーレに向かうところだと言っていた。問題なければ、一緒に連れていくつもりだが?』
 考えなしなのかなんなのか、まったくわからない。
『レナート様が、そこまで面倒をみる必要があるのですか?』
 少しだけ核心をつくような質問をすると、レナートは困ったように腕を組んだ。
『……ウリヤナは、イングラムの聖女の名だ……』
 そのたった一言で、ロイはすべてを理解した。最初からそう言ってくれればいいのに。
『ですが。その聖女が、なぜここに? それにソクーレだなんて。あそこは国境の街で、あるのは修道院と孤児院……』
『その辺の詳しい話は、ウリヤナ本人に聞かねばわからないが……。ただ、ウリヤナからは魔力がまったく感じられない』
『それは、聖なる力を持っているから、ではなく?』
 違う、とレナートは首を横に振る。
 それ以上、ロイも問い質すのはやめた。
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