あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
「少しくらい、お前ののろけ話を聞かせてくれてもいいだろ? あぁ、怖い怖い……わかったよ、さっさと本題に入ろう」
 ふとランベルトの目が鋭くなる。
 イングラム国ではここ最近、不作が続いている。詳しく調べていくと、その発端はウリヤナが力を失った時期と繋がった。なんの因果関係があるのかわからないが。
 そのイングラム国は、ローレムバ国に助けを求めてきたのだ。
 魔術師の力を用いて、からからに乾いた土壌に潤いを与えてほしい。水害のあった場所の再建に力を貸してほしい。
 その書簡が届き、ランベルトは返事を一筆したためた。
『力を貸してほしければ、ローレムバの属国になれ――』
 それは、レナートがイングラム国王に突きつけられた言葉でもある。だから、ランベルトが同じ言葉を返したのだ。
「今回、書簡を送ってきたのは、王太子なんだよな。王太子ってアレだろ? お前のウリヤナの」
 ウリヤナは王太子クロヴィスと婚約をしていた。それはイングラム国内でも知らない者はいないほどの話であり、その婚約が解消されたのも同様である。
「つまり、お前の子の本当の父親というわけか?」
 ランベルトはいちいち突っかかる言い方をしてくる。きっとレナートの反応を見て楽しもうとしているのだ。だから、それにはのらない。
「だったら、どうする?」
「いや、どうもしない。ローレムバにとって重要なのは、魔力の繋がりだ。あれだけお前の魔力になじんでいるあの子は、誰がどう見てもお前の子だな。だが、イングラムではそうでもないのだろう?」
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