あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
5.彼女が知った日
 喉が焼けるように痛い。いや、痛いのではなくカラカラに渇いている。
 身体中の水分という水分がすべて抜けてしまったかのように飢えている。
「み、みず……」
 このままでは干からびて木乃伊になってしまうのではないだろうか。
「んっ……」
 冷たい何かが唇に触れた。液体を注ぎ込まれた。それが口の中を満たすと、反射的にごくりと飲み込んだ。
 カラカラになった身体に染みわたる水分。だけど、まだ何かが足りない。身体はもっともっとと欲している。
「もっと……」
 掠れた声で催促するたびに、口の中に液体がゆっくりと注ぎ込まれていく。
 揺蕩うような意識の中を、ふわふわとさ迷っている。心地よい世界で、このままここに居たいと願ってしまうほど。
「おい、大丈夫か?」
 そんな願いは、聞き慣れない男性の声で潰えた。
「んっ……」
 開けたくもない瞼を開けると、見知らぬ男性がじっと見下ろしていた。
「えっ……ゴホッ……」
 まだ喉が痛かった。声を出すと、喉に違和感があって、咳が出た。
「水、飲むか?」
 彼の言葉に頷きながら、ゆっくりと身体を起こす。
「ほらよ」
 いつの間にか、彼は水の入ったグラスを手にしており、ウリヤナはそれを受け取った。
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