あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
「この子に俺の魔力を注げば、この子は俺の魔力を受け継ぐことになる」
 彼女の目がやわらいだ。ぱちぱちと瞬く。レナートの言葉がわからないのか、信じられないのか。それとも、レナートという男を疑っているのか。
 出会って数時間でこんなことを口にする男など、怪しい男にしか見えないだろう。
「……俺は、俺の血を継ぐ子を望めない」
「えっ?」
 吐露したレナートの言葉に、彼女の目はまた大きく開いた。先ほどからころころと変わるこの表情から、レナートは目が離せない。
「俺は、誰よりも魔力が強い……」
「それって、いいことなのでは? 魔術師であれば、魔力が強いほうがより強力な魔法を使えると聞いています」
「あぁ。魔術師としては、魔力は強いほうがいい。だが、魔力が強すぎるため、子が望めない。子を望もうとすると、どうやらその子は俺の魔力に負けてしまうらしい」
 子を望む行為に励んだとしても着床しない。そうなる前に受精卵がレナートの魔力に負けるというのが、魔術医の見解だった。
 それを口にすると、ウリヤナは口元に手を当てて何かを考え込んでいる。
「だから、俺は子を望めない。子を望めないような俺と、生涯を共にしようと思う女性もいないようだな」
 自嘲気味に笑う。
「……あの。レナート様のお年を聞いても?」
「今年で三十になる。いいか? まだ三十にはなっていない。だから、おじさんではない」
 マシューからおじさんと呼ばれたことが、心に引っかかっていた。まだ二十代なのに、おじさんと呼ばれるたびに、胸の奥に棘が刺さるような感じがしたのだ。
「子どもから見たら、大人はおじさん、おばさんですよ」
 彼女はくすりと笑った。
< 57 / 177 >

この作品をシェア

pagetop