溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
さすがに俺のことをよくわかってるのか。


だけど別に俺だって幸せになりたくないわけじゃない。


今はまだいいんだよ俺は。
まだ俺の順番じゃない。
それよりも母さんの方が先だから。


『母さんと話したのか?』


『うん、だから私ね。
おばさんに言ったんだよ。
紫音くんから目を離しませんって』


『……』


『1人で泣かせたりしませんって』


椅子に座っている俺の後ろから、そっと抱きついてきた彼女は小さく震えてて。


『お、おい』


照れ臭かったから彼女を振り払おうとしたけど無理だった。


小さい身体にしっかりと抱きしめられていたから。


『ごめん、でも』


かすかな震えと暖かい体温が伝わると、自然と頑なな心がほどけていく。


『……』


『なんだよ、若葉。
おまえが先に泣いてんじゃん』

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