半径3cm未満に(2)
「うわー、惜しかったー」
先生の好きなバンドが観れなかったのは私のせいなのにそんなことは一切言わない。
申し訳なくなりながら先生を見ると、頭をかいたが故に髪がボサボサになっている姿が目に入った。
かわいい。
そう思って少し笑うと先生もこちらを見て何笑ってんだと言わんばかりの表情をする。
そして2人で笑う。
この瞬間、幸せだと、そんな些細なことでそう思えた。
「お腹空かない?」
そういえば私のせいで夕食がまだだった。
「私は大丈夫」
「それなら俺出前取ろうかな」
出前アプリでメニューをみる先生はいつになく真剣だった。