半径3cm未満に(2)

そんな姿を横目に私はお風呂場へ向かう。

「あ、お風呂入る?
待ってお湯入れるから」

「いいよ、シャワー浴びるだけだし」

お風呂入るなんて一言も言わなかったのに、さすが凄い観察力だなあと感心しつつ、そのまま風呂場に行った。

服を脱いだ時、鏡に映る自分がふと見に入った。

ぼーっとしてる、目に力の入ってない馬鹿そうな顔に目を背けたくなった。

こんなの、私じゃない。

私には父親譲りの二重の目があるはずなのに。

もっと唇に血色があるはずなのに。

体の肉もどんどんなくなってる。



こんなの、こんなの、こんなの…。



シャワーを勢いよく頭から被った。

まだお湯が出ずに、水が冷たくて体が震える。

もう一度鏡を見て、目が二重になっていないか確認する。

うっすらと目の上にある線にほっとし、椅子に座って温かくなったシャワーで髪を洗う。


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