半径3cm未満に(2)
ーー恋衣の二重は、お父さんそっくりね。
お母さんにそう言われていた。
だから、この二重を褒められるといつもそのことを思い出していた。
でも、いつからか、お父さんの存在が遠くなっていて。
さっきの夢だって、夢で見なければ、きっと、ずっと忘れていただろう。
ーーあの思い出なんて、無意識に消し去っていたものだったから。
この頃おかしくなった私の夢には、お父さんがよく出てくる。
そのせいで私はお父さんの失踪の理由を考えてしまう。
そして今、彼はどこで何をしているのかも。
ただ、知りたい。
そう思っている私は無責任なのだろうか。