年下の彼は甘い甘い鬼




「「「若」」」


・・・ん?ワカ?


昨日街を走っていた人達に似ている?


気を取られているうちに状況は動いた


「・・・へ運べ」


「「「承知」」」


「「大丈夫か」」
「動けそうか」


声をかけながら抱き起こす様子はどう見ても知り合いに対するもの


意識がないとばかり思っていた怪我人は


「「すみません」」
「大丈夫っす」


安堵したように返している



白昼堂々と街中で喧嘩?


首を傾げた途端


目の前にスマホが差し出された


「あ、りがとう、こざいます?」


いや、違う

抜き取られたんだからお礼は変よね?


大きな手から恐る恐るスマホを取って一歩後退した


「今見たことは忘れろ」


地を這うような低い低い艶のある声


黒いレンズの所為で見えない瞳


意識が惹き込まれているうちに



音も無く現れ


一瞬でこの場を支配した黒を纏う彼は


静かに背を向けた







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