元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
 そうして一人分席を詰めたレインだったが、ユリウスはレインの腰をそっとささえ、軽く持ち上げて自分の膝の上に移動させてしまった。
 自然と横抱きにされる形になったレインは、どうしたらいいのかわからずあわあわするばかりになってしまう。
 だってユリウスが近い。ユリウスの、爽やかな森のような香りが近くて、美しい顔が近くて、その顔がレインを見てほころぶように笑んでいる。

「ユリ、ウス様……」
「その、様、というのも、いらないのだけれど。まだ慣れないね。私の可愛いレインは」

 可愛いレイン。愛しいレイン、とうたうように繰り返されて、レインは自分の頬が熱くなるのを感じていた。心臓がどきどきして、今すぐ逃げ出したいような、けれどずっとこうしていたいような気持ちになる。
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