元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

第五話 馬鹿だよな、お前(ユリウス視点)


「馬鹿じゃねぇの?」

 侍従であるベンジャミンの率直な感想に、ユリウスは口を引き結んだ。

「おひいさまのことが大事で好きならお前が娶ればいいじゃん。あの第一王子じゃなくてさァ。たぶん、いや絶対、おひいさまもその方が幸せだって」

「ベン、お前が考えなしなのは知っているが、主人にその態度を続けるならこちらにも考えがある」
「はいはい、これでよろしいでしょうか、ユリウス様」
「いや、私が悪かった、お前の敬語は気持ち悪い」
「どっちだよ!」

 ベンジャミンが机から立ち上がる。鮮やかな赤毛をしたベンジャミンはダンの孫だ。騎士の訓練も受けているので、護衛兼秘書兼侍従として雇わないか、とダンが昔に連れて来た。ユリウスにとっては乳兄弟のような存在で、気の置けない間柄だった。
 だからまあ、こういう気安い態度も取るのだが。ずけずけと言い過ぎる物言いは、彼の美点でもあるが、欠点でもある、とユリウスは思っている。
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