【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
藍くんの寝顔を見るのは初めて。
いつもの妖艶さはなりを潜め、無防備な寝顔は、あどけない子どもみたい。
目を閉じていると、ただでさえ長い睫毛がさらに強調されている。
まるで精巧に作られた彫刻のよう。
「綺麗……」
ほうっと見惚れて、ふと我に返る。
いけない、起こすという当初の目的を忘れていた。
手の中のカップケーキは、学校中を駆け回っている間にチョコチップが溶け出し、まわりのビニールに少しくっついてしまっている。
溶けてしまう前に食べてもらいたくて、就寝中に起こすのは躊躇われたけど、そっと彼の名を呼ぶ。
「……藍くーん」
けれど、藍くんは起きる気配がない。
「ん……」と形のいい唇から吐息が漏れるだけ。
「藍くん、藍くーん?」
体を揺すっていると、不意に腕を掴まれた。そして。
ベッドに引き込まれて、わたしの体はあろうことか藍くんの腕の中に。
「なっ、ぁえ……っ?」
強い力で抱きしめられて、わたしの頭は爆発寸前。