【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない

わたしはもがきながら、藍くんの目の前にカップケーキを差し出した。


「これ……! これを渡しに来たの!」

「なにそれ、カップケーキ?」


藍くんの腕の力が緩み、その隙にわたしは藍くんの腕から逃げる。


「調理実習で作ったの」

「え、由瑠が?」

「そうだよ」


すると上体を起こした藍くんが、ふっと表情を緩めて笑った。


「まじか。嬉しい」

「え……」


なんでそんな嬉しそうな顔で笑うの。

いっつもへらへら薄い笑顔ばっかり浮かべているくせに。

そんな顔で笑うなんて、わたし、知らなかった。


きりりと胸の奥が痛んだ。

純粋に喜ぶ藍くんを前にして、違う男子のために作ったものなんだよって、本当のことを言うのが躊躇われた。
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