The previous night of the world revolution8~F.D.~
ここは甘味処なのだから、甘いものが出てくるのは当然のことである。

しかし、マリーフィアが言いたいのはそういうことではないということは、俺にも分かっていた。

甘い、と言うよりは…甘過ぎる、と言った方が適切だろう。

口には出さないけど、俺もそう思いますから。

「こ、これ、何でこんなに甘いんですの?お砂糖を入れ過ぎじゃありませんこと?」

はっきり言いますね、マリーフィア。

「いいえ、この辺りじゃ、これが普通なんですよ」

「こ、これが普通…?箱庭帝国の方は、随分甘いものがお好きなんですわね…」

まぁ、そういう感想を抱いてもおかしくないが。

その言い方には語弊と誤解がある。

「このスイーツは、新年に食べるお雑煮のようなものなんですよ」

と、ルアリスが説明した。

「お、お雑煮…?あの…庶民がお正月に食べる…?」

貴族でも雑煮くらい食べろ。

「でも、あれってこんなに甘いものでしたっけ…?」

「ルティス帝国では、また違った味付けなんでしょうね。でも箱庭帝国では、砂糖がとても貴重なものだったので、新年や誕生日など、特別な時にしか食べられなかったんです」

…そんなことだろうと思った。

箱庭帝国人が特別に、甘いものが好きな訳ではない。

ただ、砂糖が貴重でなかなか手に入らないから。

新年という特別な日だけは、その貴重な砂糖を惜しみなく、ふんだんに使おうと思ったのだろう。

それでこんなに甘いんでしょうね。

「だから、新年最初に食べるこの料理だけは、砂糖をたくさん入れて甘くするんですよ」

「そ、そうなんですか…。…うぅ、甘いですわ…」

ルアリスの説明に納得しつつも、マリーフィアは顔をしかめながらスプーンを動かしていた。

蜂蜜とか果物の自然な甘みじゃなくて、ただひたすら砂糖を大量に入れた甘さですからね。

ルティス人である俺やマリーフィアにとっては、非常に「くどい」甘さである。

俺は、別に平気ですけどね。

可愛いものじゃないですか。砂糖の甘さなんて。

シェルドニア王国の、ミミズのペーストやセミの塩漬けに比べたら。

マリーフィアにあれらを食べさせたら、きっと卒倒するでしょうね。

俺とルアリスは早々に、甘いお雑煮を食べ終えたけれど。

マリーフィアはしきりに水を飲みながら、ゆっくりゆっくりとスプーンを動かし。

何とか半分くらいは食べたが、ついにそこで手が止まった。

「ごめんなさい…。もう結構ですわ…」

「あ、そうですか…」

…勿体ない。

かつてここに住んでいた秘境の里の住民達が、今もここにいれば。

マリーフィアの食べ残しでも良いから、喜んでもらっていっただろうに。

箱庭帝国のかつての貧しさを知るルアリスも、俺と同じことを考えたに違いないが。

「分かりました。無理せずに残して良いですよ」

もう要らないと言っているのに、無理に食べさせる訳にもいかず。

ルアリスは努めて笑顔で、マリーフィアのお残しを許した。
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