休憩後、また静かに机に向かう。
未だに桔梗と付き合っているという実感はない。
付き合ったからといって、日常の変化ぎ何もないからだ。

桔梗からは見えないように、ノートにデートの計画を立てた。
こんなことがしたい、あんなことがしたい。
そうやって理想を並べるうちに、口許が思わず緩んでしまう。

「なに笑ってんだよ」

「秘密」

危ない。
気づかれるところだった。

ノートに書かれたデートプランをじっと見つめる。
洋服は何にしようかな、どんな髪型で行こうかな。

そうやって想像するだけで心は満たされていった。

「そろそろ腹減ってきたな」

時計を確認すると十二時を過ぎた頃だった。
お昼時だし、そろそろ昼食にしよう。

「じゃじゃーん」

ありがちな効果音とともにお弁当箱の蓋を開けた。
片側を寄っていなくてよかった。
美味しそう、という桔梗の呟きが聞こえて思わず笑ってしまう。

「いただきます」

二人で同時に手を合わせた。
桔梗はまず最初に主役のハンバーグを取る。
私はまだ何も食べずに桔梗のリアクションを待った。

「うまい!」

箸を持ちながら右手で親指を立てる桔梗の表情は本当に幸せそうで、お世辞じゃないことがわかった。

「良かった。まずいとか言われたらどうしようかと思った」

そんなことはないだろうとは思っていた。
桔梗なら絶対褒めてくれるだろう。
でもお世辞だとわかってしまったら悲しくなる。

今の桔梗の表情はきっと本音を言っている顔だ。

「まじでおいしい! 牡丹料理上手いんだな」
< 114 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop