「めっちゃ見てるじゃん」

莉里がからかってきた。そうじゃなくて、と言おうと思ったけど、体調崩さないか心配で見てたなんてもっと言いづらい。
あんまりしつこいと対応が面倒臭いが、これぐらいだと仲が良い友達とであれば盛り上がる話題になる。

「意外と運動神経いいんだよね。帰宅部なのに」

モテるって感じなのに性格が台無しにしている、と語っている。
やはり、私が考えていたことは極端に間違っていたわけではなさそうだ。
優しくないこともないが普段からそれが表に出てくることは少ない。

「ああ見えて絶対手は出さないし。意外と優しいと思うよ」

勘違いされなさそうなぐらいにフォローしておいた。
体が弱いと言っていた桔梗だけど、今日は元気そうだった。
まだそんなに暑くはないけど、体育祭のころには日が出るだろう。
借り人競走なんて任せてよかったのかな、と今更不安になった。
いや、それは過ぎたことだ。
今私が考えすぎるのは後出しジャンケンと同じ。
だったら私がやってあげればよかった話なんだから。

「何見つめちゃってんの」

髙橋くんの彼女に声をかけられた。
この気まずさはどこからきた気まずさなのだろうか。何か圧をかけられそうで怖い。
でも彼女はにこにこと笑っていて、なんとなく話せそうな気がした。
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