午後の体育祭も大盛り上がりだったけど、桔梗のことばかり気にしていたら競技の様子なんてほとんど見れていなかった。
部活対抗リレーは盛り上がっていたけど、どの部活が勝ったのかもわからないで終わってしまった。
あれから桔梗は普通にみんなの中に馴染めていて、さっきのが現実だったのか疑いたくなる。

体育祭の最後はそれぞれのクラスの選抜者が走る色別対抗リレーだ。
一年生の一組、二年生の一組、三年生の一組が赤組、というようにチーム分けされている。

私たち四組は緑組だ。
どのクラスの選抜者もほとんどが陸上部で、本気のリレーに学校全体が盛り上がっていた。

体育祭の閉会式が終わり、各クラス学級委員と体育祭の実行委員で片付けをする。
まだ盛り上がりは収まりきっていなくて、がやがやと賑やかな校庭の砂を整えた。

「お疲れ様!」

後ろから急に肩を掴まれてびっくりした。勢い余って二、三歩前によろけてしまう。
私に飛びついてきたのは七海だった。

「お疲れ様」

桔梗のことで借り人競走でのことをすっかり忘れていた。七海は怒っているのだろうか。
七海は体育祭の実行委員でもないので、私に用があってここに残っているのだろう。

「楽しかったね」

うん、といつも通り曖昧な返事をする。
私は最後のリレーが一番面白かった、と今日の盛り上がりを振り返っていた。

「牡丹は?何が面白かった?」

借り人競走と言うべきか、それとも全く関係ない競技を答えるべきか。
迷った末に私は、部活対抗リレーが面白かったと答えていた。

すると七海は急に興味なさそうな顔になって、さっさと話を切り上げてしまった。
何が怒らせてしまった原因かはなんとなくしかわからなくて、その場でおろおろしてしまう。

「じゃあ、また後で」

そう言って去る後ろ姿には怒りがわずかに滲んでいて、私は見つめることすらできなかった。
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