思いっきり大きなため息をついて乱暴に椅子に座る。がたん、と音を立てて椅子は揺れた。

電気もつけていない部屋はまだ少しだけ明かりがある。スマホから通知音が鳴ったので、二度目のため息をつきながらスマホを手に取った。

桔梗から、三件のメッセージが届いていた。

〈今日ごめん〉
〈色々ありがとう〉
〈もう大丈夫になった〉

メッセージでも桔梗はそっけないけど、ちょっとだけ優しく感じた。
なんて返信しようか迷って、何度も打っては消してを繰り返す。

〈よかった〉
〈体調気をつけて、ゆっくり休んでね〉

よかった、の後にビックリマークを付けるか付けないかで迷った。でも桔梗はそういうキャラじゃないよな、と思ってやめた。
私はここでもうやり取りを終わらせたつもりだった。
勉強するときはスマホは邪魔になるので電源を消す。桔梗からメッセージが来ていたことに気づいたのはお風呂から出た後のことだった。

少し休憩をしようと思って、スマホを取ってベッドに寝っ転がる。
メッセージアプリの右上に赤のマークで2、と示されていた。

一番上にいる桔梗のアイコンをタップすると、二件以上のメッセージが並んでいたけど、ほとんどが送信取り消しされている。

〈今日の借り人競走さ、〉



〈やっぱ忘れて〉

取り消された内容が気になって仕方ない。
借り人競走のこと、っていうのは「好きな人」のことだろうか。
たぶん、七海の話だな。
聞きたくなかったから取り消してくれてよかった。
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