休み時間のたびに何度も何度もスマホを確認したし、教室のドアの外をずっと見つめ続けた。

なのに桔梗の存在はどこにもなくて、メッセージに既読もつかない。

返信が来たのは昼食前のことだった。

〈今、社会科資料室にいる〉

そんな返信が来るとは思ってなくてびっくりはしたけど、とりあえず桔梗が無事なことに安心した。

〈昼休みに行ってもいい?〉

今度はすぐに既読がついて、うん、と返信がきた。
いつも会ってる桔梗だけど、あと十分もすれば会えるのがなんとなくどきどきしてしまって、昼食の味がしない。

こんなに桔梗のことが好きなんだ、と自分で思って笑ってしまった。
いつのまに私は人のことが好きになれるようになったのだろうか。
しかも桔梗みたいな、別の次元で生きている人を。

急いでお弁当を完食して、スマホをポケットに突っ込んで教室をあとにした。

社会科資料室はほとんど誰も来ないから、桔梗はずっと一人だったのだろう。
いつからいたのかはわからないが、一人になりたかった理由があるはずだ。

そこに会いに行くのだから、ちゃんと心の準備をしなくちゃいけない。

誰もいない四階の廊下には私のローファーが床に当たる音だけが響いている。

社会科資料室、と書かれた教室のドアに手をかけ、深呼吸をしてから右側に引いた。
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