【小説版】セーラー服を脱ぐ前に〜脅迫されて 溺愛されて〜
「――今のところ、公子さんの結婚を公表するつもりはありませんよ」
その言葉に、俯いた顔を上げる。
ため息一つで考えを見透かされた。
顔に考えが出やすい性質だとは思ってない。弁護士故の観察眼だろうか。
「社長も同意してくださっています。婚姻届けの姓の欄も妻の方にチェックが入っていますから、公子さんは蓬莱公子さんのままです」
ウエディングディナーのつもりなのか、真紘さんはキッチンから豪華なディナーまで運んでくる。
本来ならコース料理として一品ずつ出される品が一堂に会するとなかなかの迫力だった。
「ご学友にバレることもありません」
学校――今日一日でいろんなことがあり過ぎて、明日も学校があるのを忘れてしまいそうだった。
まだ学生の身分で結婚することになるなんて、信じられなかった。
「じゃあ、本間さんが蓬莱に改姓されたんですね」
夫婦別姓が認められていない現状、私が蓬莱姓のままなら必然的に改姓するのは本間さんになる。
「ええ。蓬莱真紘になりました」
慣れ親しんだ名字に、慣れない名前がつく。
結婚に際して、男性が改正する割合は5%程度しかない。
私の結婚を隠すというのだから本間さんも仕事上は旧姓で通すのかもしれないけれど、それでも今までの名を捨てることには変わりはない。
「そう……画数多くて大変そうね」
感慨を覚えないようにそう返す。
「公子さんの名前は、苗字とバランスの取れたいいお名前ですね」
「ありがとう。お父さんがつけてくれた名前なの」
ポツリと返したお父さんという言葉が胸に染みる。
私が十二歳の時に両親は揃って交通事故で亡くなってしまった。
天国のお父さんとお母さん……私の今のこの状況どう思ってるんだろう。
おじい様の横暴を怒って、呪い殺したりしなきゃいいんだけど……ううん、いっそ呪い殺してくれたら遺産が転がり込んでいろいろ手間が省けてくれるかもしれない。
おじい様が用意した就職先を蹴って大学院へ進学して研究者になったお父さん。
おじい様の反対をもろともせずに院生だったお父さんと結婚したお母さん。
今の私と同じ学生結婚なのに、二人と私は全然違う。
二人とも芯が強くて優しい人だった。
それに比べて私は――……私はきっと、両親よりもおじい様に似てしまった。
その言葉に、俯いた顔を上げる。
ため息一つで考えを見透かされた。
顔に考えが出やすい性質だとは思ってない。弁護士故の観察眼だろうか。
「社長も同意してくださっています。婚姻届けの姓の欄も妻の方にチェックが入っていますから、公子さんは蓬莱公子さんのままです」
ウエディングディナーのつもりなのか、真紘さんはキッチンから豪華なディナーまで運んでくる。
本来ならコース料理として一品ずつ出される品が一堂に会するとなかなかの迫力だった。
「ご学友にバレることもありません」
学校――今日一日でいろんなことがあり過ぎて、明日も学校があるのを忘れてしまいそうだった。
まだ学生の身分で結婚することになるなんて、信じられなかった。
「じゃあ、本間さんが蓬莱に改姓されたんですね」
夫婦別姓が認められていない現状、私が蓬莱姓のままなら必然的に改姓するのは本間さんになる。
「ええ。蓬莱真紘になりました」
慣れ親しんだ名字に、慣れない名前がつく。
結婚に際して、男性が改正する割合は5%程度しかない。
私の結婚を隠すというのだから本間さんも仕事上は旧姓で通すのかもしれないけれど、それでも今までの名を捨てることには変わりはない。
「そう……画数多くて大変そうね」
感慨を覚えないようにそう返す。
「公子さんの名前は、苗字とバランスの取れたいいお名前ですね」
「ありがとう。お父さんがつけてくれた名前なの」
ポツリと返したお父さんという言葉が胸に染みる。
私が十二歳の時に両親は揃って交通事故で亡くなってしまった。
天国のお父さんとお母さん……私の今のこの状況どう思ってるんだろう。
おじい様の横暴を怒って、呪い殺したりしなきゃいいんだけど……ううん、いっそ呪い殺してくれたら遺産が転がり込んでいろいろ手間が省けてくれるかもしれない。
おじい様が用意した就職先を蹴って大学院へ進学して研究者になったお父さん。
おじい様の反対をもろともせずに院生だったお父さんと結婚したお母さん。
今の私と同じ学生結婚なのに、二人と私は全然違う。
二人とも芯が強くて優しい人だった。
それに比べて私は――……私はきっと、両親よりもおじい様に似てしまった。


